「マスター役」を演じたフィリップ・シーモア・ホフマン様

拝啓

ポール・トーマス・アンダーソン作品では、いつもお目にかかり監督作品では欠かせない俳優として演じていらっしゃったフィリップ・シーモア・ホフマン様。あなたのお姿がこれから先、ポール・トーマス・アンダーソン作品で拝見することが出来なくことを知ったときに、とても衝撃を受けました。

『ザ・マスター』ではいつもよりも、スマートな姿になられていたので今回の役柄に合わせてずいぶんダイエットされたのでは?!とお見受けしていましたが、特別に監督からダイエットの指示を受けたわけでもなく、あなたご自身が「マスター」役を演じるにあたっての役作りだと知りました。

1950年代のドキュメンタリー作品でのアルコール依存症の人たちの姿に近づけるべく、いえフィリップ・シーモア・ホフマン様の場合は違いますね。あなたご自身が1950年代のアルコール依存者になったかのごとくに、見事に演じきられていらっしゃいます。いつものデブッとしたという表現は適切ではないかもしれませんが、『ザ・マスター』を拝見したときにかなりスマートになられていたので、あなた様の役者魂を改めて感じたしだいであります。

いつもは食べることが大好きであるのは間違いないはずですが、この『ザ・マスター』の撮影中にはかなり食事も我慢されたと伺いました。食べるのが大好きなだけに、食べるのを忘れるほどに「マスター」役に没頭して演じたことは、演技に見事に昇華されていると思います。ポール・トーマス・アンダーソン監督が、あなたのために脚本を書いたと話をされていましたが、あなたの相手役として推薦したホアキン・フェニックスさんとの見事な演技と演技のぶつかり合いは、狂気も感じました。そしてその演技と演技がぶつかり合うと同時にあなたの持っている個性と、ホアキン・フェニックスの持っている個性がぶつかりあって、撮影中はかなりお疲れになったではないかと案じも致しました。

フィリップ・シーモア・ホフマン様あなた自身が、役者としてのホアキン・フェニックスさんの持つパワーと演技に怖い存在だと感じたとおりに、ホアキン・フェニックスさんも同じように感じていたことでしょう。そして怖い存在の根っこの部分では「尊敬」の気持ちがあるからこそ、怖い存在になったのだと思います。「ザ・マスター」役として、ホアキン・フェニックスさんが演じる「フィリップ」を操っていくかのごとく、「マスター」にとっては、フィリップの存在がなくてはならなくなかったように。またそのような演技になったのには、お2人の見事な演技があればこそですね。

食事を我慢されたほかにも、いろいろ我慢されたことが多く撮影にのぞまれたのではないでしょうか?!そして、とかく撮影というのはとてもストレスフルな現場でもあります。かつてあなた様がお若いころに、アルコール依存症を克服するために、リハビリ施設入りを決断されて見事にアルコール依存症を克服されて23年間に渡ってアルコールを断っていたというのは、とても努力がいることだと思います。

そんな23年間もアルコールと手を切って、数々の映画に出演されて独自の世界観をだし見事な演技を繰り広げてくださいました。

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そして2005年の作品「カポーティ」では、作家トルーマン・カポーティを演じられてあなた様は第78回アカデミー賞で主演男優賞を受賞されました。このシーンのいくつかでは、あなたのアドリブだと聞いています。死刑囚との最後の面会シーンでは、トルーマン・カポーティを演じるあなた様が涙を流す名シーンがありますが、あの場面も脚本にはなくあなた様ご自身が感極まって涙したシーンとなったと聞いて、まさにあなた様は役になりきり没頭される役者だと深く感じました。アカデミー賞以外にも、この作品はいろいろな賞を受賞されていますが、あなたの演技が高い評価を受けたことはひとりのファンとして、とても嬉しくそしてあなたの素晴らしい演技が認められたことに関して誇らしい気持ちも覚えたほどです。

カポーティ以降にもたくさんの役柄を演じていかれましたね。「フィリップ・シーモア・ホフマン」という役者がいないと、存在しないのではないか?!と思えるほどにあなた様はいろいろな役柄を演じられていきました。この「ザ・マスター」を拝見した時にも、あなた様以外の「ランカスター・ドッド」は考えられないほどです。今回の撮影でダイエットして演じきり、かなりのストレスを抱えながら「ザ・マスター」を演じきられた後、かなりホッとされたのではないでしょうか。ホッとした思いから、23年間お酒をたっていたにも関わらず『祝杯』を飲んでしまったと思います。

『ザ・マスター』の打ち上げパーティで、1杯の祝杯に「ほんの一杯だけ」と飲みたくなる気持ちはよーく分かります。23年間もの間、アルコールを遠ざけていた生活を送られていたので1杯ぐらいなら・・と思われても当然のことです。乾杯で飲まれたのは何を飲まれましたか?!シャンパンですか?それともビールでしたか?! 久しぶりのアルコールは、五臓六腑に染み渡ってとてもリラックスして解放された気分になられたことと思います。お酒を断っていたからこそ、とても美味しく感じたのではないでしょうか?

そして撮影のためにダイエットをして、食べたいものを我慢していた時ほどその我慢から解放されたときに、口に入れる楽しみは最高です。五感という五感が鋭くなっているので、さらに美味しく感じられたことと思います。映画の撮影も無事に終わって、「ザ・マスター」の役柄を離れてホッとされて祝杯の1杯を飲み干した時・・それは心身ともにリラックスされて、とても美味しいお酒だったことと思います。

ただ、とても残念なのがその1杯が皮切りとなってしまい、あっという間に酒量が増えたことです。それどころか、、、あろうことかドラッグにまで手を出されてしまったのは、いったいどうしてでしょうか?!

たった1杯の祝杯から、どんどん酒の量が増えてしまっていつの間にやら酒びたりの生活になってしまった時点でもとても哀しいことですが、だんだんアルコールだけでは物足りなくなってしまったのではありませんか。

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それがあんたの死を発見した時に、まさかの左腕に注射器が刺さったままの状態での、あなた様の死の発見にまでなってしまいました。オーバードーズそのままにあなた様のお宅には、びっくりすることにヘロインが65袋もあなた様の死後発見されています。

あなた様が腕に注射器を指した状態で発見されてから翌日に警察が発表した内容は、あなた様のかなりの薬物依存が伺える発表でした。長年パートナーとして暮らしていたミミ・オドーネルさんと秋ぐらいに破局したため、ひとりで暮らしていた淋しさを紛らわすために、薬物に溺れてしまったのでしょうか?!

最初の頃はヘロインには手を出していなかったと聞きました。我慢されていたのだと思います。最初は処方箋からの軽めのドラッグから始まって、どんどん強いドラッグを求めていかれたのでしょう。あなた様自身が近しい人に「このままだと死んでしまう」と漏らしていたというほど、かなり薬物に依存されていたのですね。だからこそ、2013年5月に10日間のリハビリ施設に入られたのだと思います。リハビリ施設での10日間は、あなた様にとっては無駄なものだったのでしょうか?!

だとしか思えないほど、1ヵ月に1万ドルもドラッグ購入にあてるといった生活を送っていたならば、なぜもっと長い期間リハビリ施設で治療を受けなかったのでしょうか?!アルコール依存と手を切っていた時に、あなた様が見ていたのは、シラフの輝いた世界ではなかったのでしょうか。ドラッグに興味をもっていたからこそ、あっという間にドラッグ漬けになったこもしれませんね。

あなた様が遺体として発見された時に、ヘロインの他にも癌治療を目的として使われる処方鎮痛剤、そしてオキシコンチン錠も発見されています。そしてもちろんドラッグ関連の道具のほかに、使用済みの注射器も見つかっています。袋詰めヘロインの量はとんでもないほど大量でした。どうして・・・・。としか思えません。

あなた様が亡くなって、お子さまはどれほど嘆き悲しんでいるかと思うと、胸が痛くなります。3人のパパとして、そしてとてもあなた様ご自身もとっても可愛がっていた息子さんは、どんなにか悲しんだことでしょう。2014年2月2日46歳での寿命はあまりも短すぎます。2012年の『ザ・マスター』あなた様が演じた、カリスマ性あふれそしてエネルギッシュな新興宗教の教祖を演じたことが、もしとてもストレスに感じていたためにアルコールに手を伸ばしてしまったとなれば、とても悲しい出来事とになってしまいますが、おそらく撮影を終えた開放感と演じきったことへの満足感から祝杯に手を伸ばしたのだと思いたいです。

もっともっともっと、あなたがいろんな役柄を演じるのを見たかったのですが、2014年2月2日に永眠してしまったためそれも叶わぬこととなりました。ポール・トーマス・アンダーソン監督も、あなたをキャスティングすることができなくなったため、おそらく多くの喪失感を抱えているのでは。と思います。ポール・トーマス・アンダーソン作品では欠かせない存在感あふれる俳優だっただけに、とても残念で仕方ありません。もっと年を重ねて渋みがあふれるまたおじいちゃん姿となった役柄のフィリップ・シーモア・ホフマンを、ファンとして観たかったです。

永眠なさったことはとても残念なことではありますが、これからも作品は残りそして観る観客を魅了していくことです。どうぞ安らかにお眠りください。

敬具

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